しばし 泣くぞ・・・

【雑草ポエム　第４５８話】

私の母は、来月２０日で満９０歳を迎えます。

５人兄姉の末っ子でございましたが、すでに上から３番目までの兄・姉は、順繰りと長寿の人生を全うし、土に抱かれて静かに永眠しております。

今週の１８日…
唯一健在でした３っ違いの母の姉が、ついに力尽きてしまいました。

享年９３歳…
長生きができて幸せだった…と思いたいのではございますが、実際は２０年以上も前から痴呆が進み、誰が誰だか解らなくなり、嬉しいも悲しいも分別が付かず、最後の１０年間はただ寝たきりの植物人間と化しておりましたので、『生かされていた』だけの『長寿』というものを素直に喜べるかと申しますれば、矢張り私には疑問符が付いてしまいます。

大好きな伯母さんでございました。

『男なら、簡単に泣いたらだめだよ…』
これが伯母さんの口癖でございました。

『伯母さんは泣き虫だったけど、男は泣いたら負けだから！』
如何にも戦争体験者の教訓であり、今時、こんなことを教育する女性（親）はいないのではないでしょうか。

納棺の際、アルコールで顔・手・足を綺麗にしてあげましたが…
安らかに眠る伯母の顔の表情が、我が母の顔にそっくりでございます故…

『おかあさん…』と、思わず呟いてしまいました。

どうにもこうにも涙が止まらなくなってしまった私は、伯母との最期の別れとなったこの時に、初めて『泣いたらだめ！』という教えに逆らってしまいました。

でもさぁ、伯母さん…
こんな時ぐらい、男だって泣いてもいいじゃない。

泣きてぇ時に泣けねぇからさ、男性の寿命は素直に泣ける女性と比較して短いらしいわ。


伯母さん、今日だけは勘弁な。


しばし　泣くぞ…



泣くぞ…



泣くぞ…


ｂｙ　桜川