月月火水木金金
朝だ 夜明けだ 潮の息吹 ♪
この『月月火水木金金』という名の歌は、その昔(戦争時代に)、海軍の士気を高めるために作られた軍歌でございますが、寸劇役者によって公開されましたお芝居を見たときのことでございます。
『貴様等、今日は何曜日だ!』
『日曜、お休みです!』
『馬鹿者! 軍隊に土曜・日曜はない! 月月火水木金金があるのみ! 全員任務にかかれぇー!』
『そんなぁ~…』
業務上の休暇がとれないということは、特に若い世代では耐え難い事でございましょうし、私とて例外ではございませんでした。
しかし、私は株式会社の一従業員でありながら、かつて三ヶ月間連続して休暇を取らずに働き続けたことがございます。
勿論、労基法に引っ掛かりますので、会社の指示ではございませんでしたが、誰に強要されたわけでもなく、自ら進んでこなしたのです。
二十代半ば過ぎから三十代半ばまでの約十年間、寝る間も惜しみつつ、それはもう狂ったように働きました。
大相撲のの先代佐渡ヶ嶽親方が、『人の三倍稽古しろ!』と、口癖のように愛弟子には申しておりましたが、あの頃の私は人の四倍、いや五倍以上は働いていたのかもしれません。
無論、別に余分なお金が欲しかったわけではございませんし、地位や名誉を夢見ていたわけでもございません。
では、なぜあのようなことができたのでございましょうか…、なぜあそこまで頑張らなければならなかったのでございましょうか…。
私には ほぼ同期で女性のライバルがおりました。
その好敵手は同じ神奈川県人でありながら、横浜市出身の東大卒。
二年遅れながら『鳴物入り』で入社してきた後輩を横目に 『東大出ではさすがに相手が悪すぎる…』と、匙を投げ、出世レースをする気にもなれませんでした。
私はその頃、つまらない固定概念を抱いておりまして、『東京大学へ入学できるような人間は、生まれつき脳みその構造が我々とは違っており、さしたる努力もせずに何でも暗記できる能力を持っている、ある意味特殊な人間なんだ』と、恥ずかしながらも 真剣に思っておりました。
しかし、現実は全く違っていたのです。
その後、後輩宅に遊びに行った時に気が付いた事なのですが、学生時代に使用していたという本棚には 分厚い参考書が所狭しと詰め込まれており、『財政経済』やら、『数学理論書』等、大学入試時に使用したと目される高等文学の書物ばかりが犇めいておりました。
私は何の気なしに一冊の参考書を手に取り、パッと見開いた瞬間、思わず愕然としてしまったのです。
その参考書は二千ページもある分厚い本でございまして、約一ミリ四方の細かい文字が全体にビッシリと詰まった実に内容の濃い参考書。
一つのページにアンダーラインや要点書き、疑問点の走り書きや蛍光ペンでのマーキング、また数十回にわたるシャープペンシルの消した跡、何十回もページをめくった指紋の跡など、もう一つのページに白い部分など微塵にも無いほど、ありとあらゆることが書き込まれているのです。
しかもそれが金太郎飴のごとく、二千ページの何所を見開いても同じことでございまして、如何にも『大勉強をやった』 という 何よりの証拠であり、証明でございました。
かの大横綱大鵬が『天才』と呼ばれることを極力嫌い、『オレは天才なんかじゃない、努力家だ!』と、報道陣を一睨みしたことは有名な話でございます。
そう、『努力に勝る天才なし!』
まさに後輩は努力の塊りでございました。
青春の学生時代を、サイボーグのごとく全て勉学に費やし、努力に努力を重ねた結果、日本一の東京大学に入学することができたのです。
それを『頭の出来が違うから…』とは、何とも愚かな考えでございましょうか。
私は自分が恥かしかった…。
『人の三倍、いや、五倍の努力をしてみよう、やってみようじゃないか!』
これが、私の目の色を変えた理由であり、瞬間でございました。
外国のメディアなどから『日本人は働きすぎだ』というご意見をいただきますが、確かにその通りなのかもしれません。
完全週休二日制に加え、有給休暇を含めれば、一年間の三分の一弱は休日とする定めになっておりまして、頻発する『過労死』などの対策のため、労働基準監督署がやたらと調査に来ております。
現在、私は管理職という立場でございますので、決して若い者には無理な労働を強要したりはいたしません。
休んで結構、いや、休まなくてはいけないのですよ、人間であるならば。
ただ、あの頃から私の(一週間)リズムは『月月火水木金金』であり、心の土日は無に等しいのでございます。
それがために、得る物は多かったですが、失った物も実に多く、もう取り返すことは二度とできなくなってしまいました。
盆や正月でもあるまいに、子供ですら学校へ出かけて行くド平日に、悠々二桁連休を決め込む大人が沢山存在する現実に、腹立たしさを覚えてしまう私は既に人間ではございません。
私は企業サイボーグ…、哀れな戦闘マシンでございます。
この『月月火水木金金』という名の歌は、その昔(戦争時代に)、海軍の士気を高めるために作られた軍歌でございますが、寸劇役者によって公開されましたお芝居を見たときのことでございます。
『貴様等、今日は何曜日だ!』
『日曜、お休みです!』
『馬鹿者! 軍隊に土曜・日曜はない! 月月火水木金金があるのみ! 全員任務にかかれぇー!』
『そんなぁ~…』
業務上の休暇がとれないということは、特に若い世代では耐え難い事でございましょうし、私とて例外ではございませんでした。
しかし、私は株式会社の一従業員でありながら、かつて三ヶ月間連続して休暇を取らずに働き続けたことがございます。
勿論、労基法に引っ掛かりますので、会社の指示ではございませんでしたが、誰に強要されたわけでもなく、自ら進んでこなしたのです。
二十代半ば過ぎから三十代半ばまでの約十年間、寝る間も惜しみつつ、それはもう狂ったように働きました。
大相撲のの先代佐渡ヶ嶽親方が、『人の三倍稽古しろ!』と、口癖のように愛弟子には申しておりましたが、あの頃の私は人の四倍、いや五倍以上は働いていたのかもしれません。
無論、別に余分なお金が欲しかったわけではございませんし、地位や名誉を夢見ていたわけでもございません。
では、なぜあのようなことができたのでございましょうか…、なぜあそこまで頑張らなければならなかったのでございましょうか…。
私には ほぼ同期で女性のライバルがおりました。
その好敵手は同じ神奈川県人でありながら、横浜市出身の東大卒。
二年遅れながら『鳴物入り』で入社してきた後輩を横目に 『東大出ではさすがに相手が悪すぎる…』と、匙を投げ、出世レースをする気にもなれませんでした。
私はその頃、つまらない固定概念を抱いておりまして、『東京大学へ入学できるような人間は、生まれつき脳みその構造が我々とは違っており、さしたる努力もせずに何でも暗記できる能力を持っている、ある意味特殊な人間なんだ』と、恥ずかしながらも 真剣に思っておりました。
しかし、現実は全く違っていたのです。
その後、後輩宅に遊びに行った時に気が付いた事なのですが、学生時代に使用していたという本棚には 分厚い参考書が所狭しと詰め込まれており、『財政経済』やら、『数学理論書』等、大学入試時に使用したと目される高等文学の書物ばかりが犇めいておりました。
私は何の気なしに一冊の参考書を手に取り、パッと見開いた瞬間、思わず愕然としてしまったのです。
その参考書は二千ページもある分厚い本でございまして、約一ミリ四方の細かい文字が全体にビッシリと詰まった実に内容の濃い参考書。
一つのページにアンダーラインや要点書き、疑問点の走り書きや蛍光ペンでのマーキング、また数十回にわたるシャープペンシルの消した跡、何十回もページをめくった指紋の跡など、もう一つのページに白い部分など微塵にも無いほど、ありとあらゆることが書き込まれているのです。
しかもそれが金太郎飴のごとく、二千ページの何所を見開いても同じことでございまして、如何にも『大勉強をやった』 という 何よりの証拠であり、証明でございました。
かの大横綱大鵬が『天才』と呼ばれることを極力嫌い、『オレは天才なんかじゃない、努力家だ!』と、報道陣を一睨みしたことは有名な話でございます。
そう、『努力に勝る天才なし!』
まさに後輩は努力の塊りでございました。
青春の学生時代を、サイボーグのごとく全て勉学に費やし、努力に努力を重ねた結果、日本一の東京大学に入学することができたのです。
それを『頭の出来が違うから…』とは、何とも愚かな考えでございましょうか。
私は自分が恥かしかった…。
『人の三倍、いや、五倍の努力をしてみよう、やってみようじゃないか!』
これが、私の目の色を変えた理由であり、瞬間でございました。
外国のメディアなどから『日本人は働きすぎだ』というご意見をいただきますが、確かにその通りなのかもしれません。
完全週休二日制に加え、有給休暇を含めれば、一年間の三分の一弱は休日とする定めになっておりまして、頻発する『過労死』などの対策のため、労働基準監督署がやたらと調査に来ております。
現在、私は管理職という立場でございますので、決して若い者には無理な労働を強要したりはいたしません。
休んで結構、いや、休まなくてはいけないのですよ、人間であるならば。
ただ、あの頃から私の(一週間)リズムは『月月火水木金金』であり、心の土日は無に等しいのでございます。
それがために、得る物は多かったですが、失った物も実に多く、もう取り返すことは二度とできなくなってしまいました。
盆や正月でもあるまいに、子供ですら学校へ出かけて行くド平日に、悠々二桁連休を決め込む大人が沢山存在する現実に、腹立たしさを覚えてしまう私は既に人間ではございません。
私は企業サイボーグ…、哀れな戦闘マシンでございます。
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