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吉原 遊郭 見返り柳 (其の三)

【雑草ポエム 第657話】

浄閑寺(投込寺)から土手通りを歩いて20分弱…

吉原遊郭の入り口として、唯一その名をとどめておりますのが『吉原大門(おおもん)』交差点であり、信号機横の標識に大きく掲げられております。

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『吉原大門』とは、言うまでも無く(当時の)吉原歓楽街への正面玄関でございまして、その治安目的は勿論、遊女たちの逃亡を防ぐため、出入はこの大門一箇所のみとされていたそうでございます。

江戸時代には黒塗り木造のアーチ型楼門が建設され、明治期には2代目となる鉄門が築かれましたが、1911年の大火(いわゆる吉原炎上)で焼失し、その後は関東大震災を機会に撤去されたそうでございます。

↓映画『吉原炎上』での吉原大門

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この吉原大門交差点、ガソリンスタンドの角にひっそりとたたずむ石碑がございまして、それには『見返り柳』と意味ありげな文字が刻まれておりました。

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これはかつて、京都の『島原遊郭』の門口に柳があったことから、それにならって吉原でも柳を植えていたらしく、その柳の辺りで、享楽を堪能した客が去りがたい思いを抱きつつ、遊郭をその場で振り返ったのが『見返り柳』と称される由来でございます。

ただ、実際に柳がありました場所は山谷堀脇の上手であり、道路整備や区画整理といった都市の変貌に伴いまして、現在の場所に移されたそうでございます。

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↑ちょうど石碑の後ろ側に1本の大きな柳がございますが、もちろん当時の柳ではございませんで、大震災で焼けたりしては植え替えられ、現在の柳は6代目だということでございます。

柳の木に日本人がしっとりした情感を抱きますのは、昔も今も変わる事はございません。

↓また、石碑の脇には台東区教育委員会の説明パネルが設置されております。

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遊郭関連の歴史を説明する、『教育委員会』の姿勢を粋に感じましたと同時に、『遊郭』があったという事実を『地域の歴史』として真面目に受け止める姿勢が、哀しみを抱いて他界なされた若き遊女たちの供養にもなると、私はとても心地良い思いがいたしました。

なぜならば…
浄閑寺に投げ込まれる、亡くなった遊女たちに付けられた『戒名』を読んだ時…!

『○○院○○○売女』

何ということでございましょうか…
生きて地獄、死してまで、なお『売女』などと卑劣な名を付けられてしまったのでは、あまりにも酷過ぎます。

『売女』とは何事か!
私は怒りに震えました。

時が経ち、こうした『教育委員会』の心意気に、思わず目頭が熱くなってしまいました。



遊郭のメイン通りへは『吉原大門』の交差点を、ガソリンスタンドの右側の道に入って行くのですが、この道はなだらかなS字を描いておりまして、これは昔の吉原時代そのままの道なりでございます。

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道がS字になっておりますのは『目隠し』のためでございまして、遊郭への出入りが吉原大門(大通り)から丸見えになるのを防ぐという効果がございます。

このようにS字にしてしまえば、通りが丸見えになることはなく、客は安心して遊郭を歩くことができたのかもしれません。


何の変哲もない普通の道路(交差点)ですので、『吉原大門』という標識がなければ間違いなく素通りしてしまうことでしょう。

それくらい、現在のこの地に『昔の吉原』の面影はございません。

『見返り柳』は、本来あった場所から『吉原大門交差点』へ移されておりますので、これも本来の吉原の姿とは異なります故、あえて悪く申しますれば歴史に手を加えてしまった…ということになる。

しかしながら、そこまでしてでも歴史の断片を後世に残そうとしたのでは…という具合に、私は好意的に見ることにいたしました。

とは申せ、このS字道路を入ってメイン通りに出て行きますと、夥しくソープランドの看板ばかりが目立ちます。

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現在でも147店舗(最盛期には250店舗)もある日本一のソープ街。

この世に『吉原』という地名は無くなりましたが、『遊郭』としての性質はこの地に受け継がれているのであると、あらためて実感することができました。

私が訪ねた日、私と同じように『吉原大門』の標識にカメラを向け、『見返り柳』の石碑に見入っている人たちがおりました。

その人たちは私より先に『S字の道路』を入って行きましたが…
いったい、どんなことを思いながら歩いていたのでございましょうか。

きぬぎぬの うしろ髪ひく 柳かな

見返れば 意見か柳 顔をうち


by 桜川
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色々な思いがあって、コメントできないな。。
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雑草ポエム、書籍化することができました。

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