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雑草の男(西本 聖)




本日の雑草ポエム

タイトル
 『 雑草の男(西本 聖)』

窓を開け、ひんやりとした真冬の空気を肌で感じながら ふっと庭先に目を向けますと、そこには腐りかけている一本の雑草が横たわっておりました。

役目を終え、枯れようとしている雑草・・・それでもまた太陽が昇れば鎌首を持ち上げ、必死になって生きようとする雑草。

『雑草の男』・・・こんな異名をとったプロ野球の選手がおりました。

昭和62年、この年は世界のホームラン王である 王貞治監督が、巨人軍の監督に就任してから4年目を迎えておりましたが…。

過去3年間の成績が全て3位という 巨人軍といたしましては非常に不本意な成績でしたので、王監督自身にとりましては進退を賭ける 正に勝負の年となりました。

また 後楽園球場が、翌年からドーム球場に生まれ変わるために、長い歴史に幕を閉じる記念の年ということもございまして、なんといたしましても優勝しなくてはならないという、非常に重い使命を背負って 巨人軍は開幕戦を迎えたのでした。

開幕カードは新鋭監督の星野仙一さん率いる中日ドラゴンズ。
この年は パ・リーグの3冠王 『落合博満』 を大型トレードでロッテから獲得し、日本人初の1億円プレーヤーといたしまして注目を浴びまくっておりました。

闘将星野監督&天才落合に対する王巨人の開幕戦。
超満員の後楽園球場に響き渡った場内アナウンス 注目の開幕投手は 『ピッチャー 西本!』 


この時、場内はどよめきの渦と化しました。

『ウォォー!』というよりは 『えぇー????』という声の方が多く、誰しもがエース江川VS落合の怪物対決を期待していたプロ野球ファンは 一瞬拍子抜けしてしまったようでした。

西本聖投手…
昭和50年 第一次長島政権誕生の年に ドラフト5位(事実上 ドラフト外)で入団した 全く無名の高卒投手でございました。

同じ年に大活躍した 甲子園のスーパースター 『定岡正二投手』 が ドラフト1位で指名され、連日連夜スポットライトを浴びまくっている同年のモテモテ男に対しまして、西本投手の雑草魂に火が付いたのです。

『俺は必ずこの男を抜いてやる!』
西本投手はひたすら猛練習に絶える日々が続きました。 



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多摩川グラウンドまでベンツで通う江川投手を横目に、長距離を自転車で通いとおした西本投手。

努力に努力を積み重ね、ようやくその努力が実を結んだのが 奇しくも長嶋政権最後の年、昭和55年に14勝をマーク。

翌昭和56年には 名将藤田監督に惚れ込まれ、エース江川と肩を並べる大活躍で18勝という成績を挙げ、藤田巨人の日本一奪回に貢献した上に、その年のオフには沢村賞まで獲得するなど、無名の高卒ピッチャーは その時既に同期1位の定岡投手を超えておりました。

西本投手には決定的な武器がありました。
ホームベース直前から折れ曲がり、打者の足元へ鋭く落ちる 『シュート』という名の 『魔球』 です。

元々江川投手のような速球で三振を取るタイプではなく、コースを丁寧につきながら攻めるという、典型的な『打たせて取る』 タイプの投手でした。

西本投手と言えばシュート。この絵に書いたような鋭いシュートは、まさに魔球そのものでした。

ところが・・・
順風に見えた西本投手の野球人生でしたが、王政権になってからというもの、人間関係に悩む日々が続き、成績も次第に下降線を辿り始め、元来負けん気の強い一匹狼的気質の西本投手は、徐々にチーム内でも孤立してゆくのでした。

『もう西本は終わった・・・』
巨人軍というチームは、今も昔も 『仲良しこよし』 の体質であり、西本投手のような一匹狼的存在は、受け入れづらい場所だったということなのです。

しかし、巨人軍には不思議なジンクスがございました。
『開幕戦で西本が投げ、勝った年は優勝ができる』 というものです。

確かにその通りでしたが、心身ともに衰えを見せ始めている西本投手を、あの王監督が開幕戦で起用することは考えにくく、ましてや相手は新鋭監督に注目の落合選手という、日本全国が注目する好カードに 地味な西本投手はおよびでない・・・。

しかし…昭和62年の開幕戦、超満員の後楽園スタジアムに響き渡った開幕投手の名は・・・
『ピッチャー・・・西本・・・背番号26!』  



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開幕戦恒例のオープニングセレモニーが行われ、国歌 『君が代』 が演奏される中、西本投手はベンチの片隅でグラブを胸に当て、落着いた表情で前を見つめておりました。

やがてナインが自らのポジションへ散り、大拍手の渦へ一人マウンドへ向かった西本投手。

日本テレビのアナウンサーが 「さぁ、皆さんの開幕投手予想は当りましたか? 何と巨人は西本の先発です!」この意外とも受取れる実況放送の中で映し出された西本投手の澄んだ顔、今でもはっきりと覚えております。

注目の対決は初回、いきなり行われました。
ツーアウトでランナー1人。迎えるバッターは『四番 サード落合』

セントラルリーグ初の公式戦で、対戦するピッチャーは パリーグには見当たらない変化球投手。
落合選手は当然ながらシュート一本に狙いを定めておりました。

注目の第一球、西本投手は いきなり初球から得意の内角を鋭く抉るシュートを投げ、これが見事な曲線を描いて足元へ落ちてゆく。

落合選手は狙い通り、左足を下げてバットを振り抜きましたが、シュートの切れ味鋭く、ショートゴロに倒れてしまいました。

「一球料理ぃ~!」(←日テレアナの叫び)

初対決は 僅か一球の勝負でしたが、これがこの日の全てでございました。

乗りに乗った西本投手は、その後もドラゴンズバッターを薙ぎ倒し、落合選手に対しては 投げる全てのボールをシュートで決め、一球たりとも遊ぶことなく、シュート・シュートのオンパレード。

結局 落合選手は全打席 シュートに詰まったショートゴロに終わり、ほろ苦いセ・リーグデビューとなってしまいました。

西本投手は開幕戦を完封で勝利、確執が噂されている王監督とも、この日ばかりは慢心の笑顔で握手を交わしておりました。

ジンクスの通り、この年 巨人軍は久々にリーグ優勝を果し、王監督は初めて中に舞いましたが、雑草男の西本投手は、翌年オフに 中日へトレードされてしまいました。

巨人軍ではボロ雑巾のように捨てられた雑草の男は、闘将星野監督の下で蘇り、自身最多の20勝をマーク。

その 『ど根性精神』 は、今でも私の手本となり、胸の奥で躍動しております。


 by 桜川



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