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引退の美学(輪島編)




本日の雑草ポエム

タイトル
 『 引退の美学(輪島編) 』

昭和56年3月場所、この時は既に場所前から 第54代横綱 輪島大士の引退説が囁かれておりました。

その理由は、既に花籠親方の愛娘と結婚し、花籠部屋を継続することが決定しておりました中で、場所後に定年を向かえます花籠親方に代わり、そのまま引退して部屋を受継ぐのではないかという憶測の元で・・・。

しかし、そのもう一方で、2場所前(昭和55年11月場所)に8場所振りの復活優勝している輪島の力は衰えておらず、親方兼任の現役力士という、過去においても珍しい《二枚鑑札》という特例も承認されるだろうという話も根強く残っており、マスコミの報道のみならず、雰囲気的にもそういう運びになる可能性が高いだろうと、当時高校1年生でした私も思っておりました。

『輪島は今場所限りか』
『いや、そんなことはないです!』

通っていた高校では、担任の先生によくからかわれていましたね…。
今にして思いますれば とんでもないセンコ~でした。

親方兼任の現役力士…
コレはあくまで私の推測に過ぎませんが、この時に《二枚鑑札》特例が承認され、一つの前歴を作っていたとしたならば、現・佐渡ヶ嶽の琴ノ若も引退することなく 同様の措置にて現役を務めていたかもしれません。

かも・・・ですが。




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様々な憶測の元で土俵に上がった輪島と相対するのは、学生相撲の後輩でもある高砂部屋の朝潮太郎(現・高砂)。

立会い左の肩で朝潮の強烈な当りを受け、その圧力に一歩後退するも落着いて受け、左の下手を差すことなく 前褌を引く形で右上手を引き付けると、朝潮はたまらず後退してしまい、そのまま向正面中央へ寄り切ってしまいました。

『輪島、圧勝!』 とは、NHK杉山アナウンサーの弁。
初日早々から強い輪島を見せ付けられ、息も切らさず涼しい顔で懸賞金に手刀を切る輪島の姿に、大相撲ファン誰しもが 『輪島の現役続行』を疑いませんでした。

そして運命の2日目、輪島と対するは これまた強烈な 『がぶり寄り』を特異とする実力者の琴風。

一場所前の初場所では組み止める事が出来ず、終始不利な体制からそのまま寄り倒されてしまっている相手です。

軍配返って庄之助、はっきょいの声と共に立ち上がった両者でしたが、今場所の輪島は踏み込み鋭く、サッと得意の左下手を深々と差し込み、北の湖ですら苦しんだという『右のしぼり』 を効かせる体制に持ち込んだ輪島は勝利を確信したに違いございません。

ところが輪島は仕掛けない・・・
終始攻めているのは琴風であり、輪島はそれを受けて機をうかがうという体制。

琴風がしゃにむに寄る・・・輪島が小さく下手投げを放つ・・・が、効かない。

土俵中央で時間ばかりが経過する。
琴風が寄る・・・寄る・・・寄る!
輪島がしぼる・・・半身になる・・・小さく下手投げ・・・顔は真っ赤!

大阪府立体育会館は 思わぬ熱戦に大拍手が沸き起こる!




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輪島がしぼる・・・琴風寄った 寄った!・・・輪島の下手投げ・・・琴風なおも寄る 寄る がぶって寄る!

手に汗握ったその瞬間、ウワーっという大歓声の中、TV画面が真っ白になって・・・

『寄り切りぃーーーー、琴風の勝ちぃーーーー!』
ハッと正気に戻った私の目には、土俵下から立ち上がろうとする輪島がはっきりと飛び込んでまいりました。

輪島は1分を越す大相撲の末に負けたのです。

これで1勝1敗の成績となり、支度部屋へ戻った輪島は記者団に囲まれまして、質問を受ける前に思わず発した第一声が 『琴風が強くなったなぁ~・・・』でした。

その後はいつものように 淡々と答えて引上げて行く輪島を、まさか本日限りで引退してしまおうとは、その時誰しも予想すらしていなかったのです。

ところが翌日、お昼のニュースやワイドショー等で…
『横綱輪島、引退を引退表明!』  という第一報が全国へ伝えられたのです。

その日の午後に引退記者会見を開いた輪島の目には涙もなく、実にさっぱりとした晴れやかな表情で・・・

この引退激には様々な憶測がございますが、私達ファンが一番首を捻ったのは『なぜ2日目で』 ということでした。

初日から連敗して引退を決意した例は沢山ございます(北の湖等)。
しかし、初日に(しかも朝潮)完勝し、2日目も敗れたとはいえ、彼の力を十分に出し切れる体制を作って戦ったのですから、決して無様な負け方ではなかったはず。

それがなぜ・・・?

その後、輪島いわく 『(琴風戦で)あの体制になりながら俺は負けたんですよ。もう勝つ方法がないでしょう・・・だからですよ』とのこと。

そう、万全の体制になりながら勝てなかった。
これが輪島の(引き際の)美学というものなのでしょうか。

寂しかったです…



 by 桜川




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