親の顔…


その昔、大相撲界におきまして 『もろ差しの名人!』 という異名をとった技能力士がおりました。
その力士の四股名は 『鶴ヶ嶺』!
小さい身体で相手の懐へ潜り込み、天性の差し身の速さは天下一品でございまして、並み居る強豪をてこずらせた玄人好みの名力士でございました。
残念ながら私の場合、年齢的にも現役時代の鶴ヶ嶺ををリアルで見ることができませんでしたので、どちらかと申しますと引退後の親方 『井筒』 としての思い出の方が、やはり強く心に残っております。
『私はねぇ、3人の実子たち(鶴嶺山、逆鉾、寺尾)には よう言うて聞かせてあるんですよ。 ワシは部屋の師匠であり、お前たちの父親ではないんだよ… とねぇ』
これは井筒親方が常日頃、TVや各取材のインタビュー等で必ず残してきたコメントでございます。
親が師匠(社長)であれば、子供(後継ぎ)は当然優遇されると思われがちですし、それがために 他の弟子たち(従業員)が理不尽に思い、へそを曲げて付いて来なくなってしまうという実例は数多く…。
そのことを最も恐れ、気にかけてくれていた素晴らしい先代親方。
愛弟子の前で、自分の実子を殴って見せた。
特に長男を徹底的に殴り倒したその姿は、次男、三男の胸に大きな衝撃を与え、完全たる 『親子決別』 の意味合いを心に深く刻まれたと申します。
母親の居ない不憫な3人の息子たちを想いながらも、他の弟子への信頼関係を確立させるため、心を鬼にして拳を振り下ろすことができた先代親方。
私が属した会社でも、トップに君臨する取締役の大半は血縁者で占められておりますが、これはどこへ行っても同じ事でございましょう。
所詮、自分が一番可愛いのです。
特に 『自己チュー族』 が増えつつある現代社会では尚更のこと、自分の子孫を優遇したがるのは、ある意味自然なことなのかもしれません。
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しかし、それで果たして周りの人間は納得しているのでしょうか?
実力の伴わない能無し野朗が、『血縁者』 もしくは 『娘婿』 という名目のみで大量な株を難なく受け継ぎ、でかい顔をして取締役会議に出席している姿を目の当たりにした時に、本気でその者を尊敬することができるものでしょうか。
おこぼれを頂戴しようと、シッポを振りながらせせり寄っているウジ虫共が、どこへ行きましても沢山存在いたしますが…。
人それぞれに考え方の相違はございますでしょう。
しかし、私にはどうしてもそうした組織の甘さ、利己的な体質を許すことができないのです。
先代井筒親方も、お若い頃にそうした経験が少なからずおありになられたのでしょう。
『人の痛みは、痛みを知る者でなくてはわからぬこと』
巨大企業の取締役どもが、そうした 『痛み』 など知る由もないでしょう。
なぜなら、彼らも同じ待遇で 難なく親から受け継いできた人間なのですから。
先代井筒親方は 霧島ら、部屋の若い衆を集めて言ったそうです。
『ワシが母親の居ない実子たちを不憫に思い、もし皆の前で親の顔が少しでも出てしまった時があったとしたら…、その時は許してくれ…』…と。
先代親方はその後、名門井筒部屋を次男坊の逆鉾に譲り、相撲界から身を引きましたが、親子の縁を切ったという深い溝は埋まることが無く、晩年は寂しい最期を遂げられたと申します。
病んでいた事も、死んだことも知らなかったという息子。
親の心、子知らず…
馬鹿め!
by 桜川
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