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長谷川 ありがとう…




私は昭和47年3月場所(当時8歳)以来、日本の国技たる 『大相撲』をこよなく愛し続けてまいりました。

まだ幼き頃は、父親が観ている大相撲中継が大嫌いでございまして、本場所が始まると 自分が観たいTVアニメも拒否されてしまい、心から父親を…というより、大相撲そのものを憎んでおりました。

しかし、昭和47年3月場所の初日、ある力士が立合いで突っ掛け、それを受け損なった力士が 『ひょいっ』 と右手を差し出し、立合いが不成立となった時のこと…

子供心に 『?』 と思った私は…
『ねぇお父さん、今この左側の人、いったい何をやったの?』

『ん?…あれはだなぁ、相手が早すぎたから待ったをしたんだよ』

『待った?・・・まった?』

私はその当時、相撲というものは大人の世界であり、子供には全く意味の通じない言葉や仕来たりで覆われている、いわば別世界の競技だとしか思っていなかったのではございますが…

『今の仕草は見ての通り、まった…?、ちょっと待ってくれのまった?ん~…、何て単純な表現なんだ…』

これが私の 『大相撲にのめり込むきっかけ』 となった第一段階でございました。

その一番はそのまま黙って観ておりましたが、注目していた 『まった』を仕掛けた力士が圧勝したのです。

私は思わず…
『お父さん、今勝ったこの人 なんていう名前なの?』

『あぁ、長谷川というんだ』

『はせがわ・・・ はせがわ・・・?』
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気になっていた力士が快勝し、その力士の四股名が 『長谷川』

当時8歳の私には、この 『長谷川』 という聞き慣れていた名前に対しまして、、とうてい力士の四股名とは思えないほど身近に感じてしまい、この長谷川と言う力士に妙な 『好感』 と申しますか、 『愛着』 のような物を感じ始めていたのです。

翌日から少し気にして大相撲中継を観るようになり…
『あっ、長谷川だ・・・あっ、勝った』

『あっ、また長谷川だ・・・また勝った!』 

と、毎日のように長谷川戦を注目し、また、この場所は長谷川の調子も実に良く、彼が勝てば勝つほど胸が躍り、ガッツポーズまで出るようになってしまいました。

『今場所は上位が情けないから、長谷川の優勝もあるかもしれんぞ』
父が私の顔色を伺いながらニヒルに言う。

『本当に?』
父の言葉に飛び跳ねる私。

大関大麒麟戦では、素人目から見ましても 明らかに長谷川が 『浴びせたおし』 で勝った一番が、行司の差し違えで大麒麟に軍配が上がり、思わずTVを蹴飛ばして 親に怒られたのを思い出します。

長谷川の快進撃はさらに続き、なんとその場所 『12勝3敗』 という見事な成績で初優勝を決めてくれました。

私の大相撲人生(大げさです)は、こうしてスタートしたのです。

以降、中学生の時に初めて念願の蔵前国技館(500円のスタンド席)初観戦できたときは超感動でございまして、ウワァ~ンという場内独特の歓声を聞いたときには思わず涙がこぼれてまいりました。
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長谷川には地力があった。
あの当時、誰もが認める大関候補の筆頭でした。
大関昇進への目安となる通産勝ち星もクリアし、関脇での実績、品格、風格、まったく問題なく、さらにこうして優勝まで決めていた長谷川でしたが、不運にも大関昇進を見送られてしまい、ついに夢を叶える事も無く現役を引退してしまいました。

『私はもう大関になったつもりです!』
これは引退記者会見にて発しました、関脇長谷川の現役最後の言葉でございました。

その後、兄弟子である琴桜と共に、名門佐渡ヶ嶽部屋の弟子の育成等に尽力を注いでまいりましたが、もう間もなく定年を迎えようとしております。

この人が存在しなければ、私は大相撲に興味心を抱くことなどなかったでしょう。

この人に憧れ続けて33年目の初夏の頃…
両国国技館におきまして、初のツーショットを撮影していただけるという幸運に恵まれました。

『こっ…こんにちは!』
私は深々と頭を下げ、両手で握手をしていただいた後、もう一度深々と頭を下げて…。

感無量とは、まさにこの時の心境でございましょう。
何も言葉が出ませんでした。

私は…
8歳の少年に戻っていたのです…

ありがとう、長谷川…
そしてさようなら、長谷川…
 by 桜川


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