柏戸〈ライバル〉大鵬


【雑草ポエム 第502話】
人生におきまして、ライバルという存在に恵まれるということは、大変幸せなことでございます。
↓ますはこの写真から…

これは、長年の大相撲ファンでありますれば、誰しも一度は見たことのある『歴史的瞬間』を捉えた一枚の写真であり、私が最も好きな大相撲史のワンシーンでございます。
1960年1月場所…
後に、史上最強の大横綱と相成ります『大鵬』が、若干19歳にて新入幕の緊張する場所でありながら、初日から古豪の幕内力士を日の出の勢いのごとく薙倒し、大相撲史上初の『新入幕11連勝』を飾ったのでございます。
(※この記録は未だに破られておりません。)
『こ…これは…』
『えらいのが現れたな…』
怪物『大鵬』の名は日本列島を駆け巡り、その勢いを止めるのは誰なのか…ということに、ファンの興味は一極集中!
12日目の番組が発表され、大鵬の相手に指名されましたのは、東小結の21歳『柏戸 剛』でございました。
とたん、大勢の新聞記者が柏戸の周りを取り囲み…
『連勝中の大鵬との対戦が決まりましたが、一言お願いします…』
『明日の勝算はありますか?』
『勢いを止められる自信は?』
矢継ぎ早に飛び交う質問攻めに対し…
『馬鹿野郎!』と、柏戸は新聞記者を一喝!
そして…
『番付をよく見ろよ!』
柏戸は大声でそう言い残し、肩を怒らせながら支度部屋から出て行ってしまいました。
新入幕の大鵬に対しまして、先輩の柏戸は既に協会の三役の力士。
『番付をよく見ろ!』とは、『格が違うぞ!』ということでございます。
通常の会社組織に当てはめますと、『小結』という地位は課長クラスでございますので、如何に逸材の新入社員が相手とは申せ、課長クラスの人間が負けたとあっては恥の恥。
柏戸は、眠れぬ夜を孤独に過ごした…と、後に語っております。
そして迎えた12日目…。
柏・鵬(はくほう)時代の幕開けとなります注目の大一番、行事の軍配が返って…
『待ったなし!』
立会い鋭く踏み込んだ柏戸が左半身の体制となり、大鵬の左の差し手を徹底的に嫌うように、渾身の力で右から『おっつけ』を連続し…(中略)
『あっ…と思ったら、やられてた…』(大鵬のコメント)
土俵の中央で柏戸の『下手出し投げ』が見事に決まり、『小結の意地』に引き摺られるかのごとく、新鋭の大鵬は土俵の上へ前のめりに沈みました。
柏戸、あっぱれ!
私は、このエピソードを知った時から、この1枚の写真を見るたびに胸が高鳴り、己の教訓とするようになったのでございます。
↓ライバルって、いいな…

この者がいたからこそ、今の自分があり…
この者がいたからこそ、切磋琢磨してここまで昇ることができたのだ…
心身ともに鍛えられつつ…
そんな素晴らしい『ライバル』に恵まれて、日々戦える人は幸せ者でございます。
月月火水木金金…
私には、素晴らしいライバルがおりました。
物凄い好敵手が…1人。
あの時、私は幸せでした。
by 桜川
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