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雨垂れ 石を穿つ



ここのところ気の休まらない日々を過ごしておりましたが、そうした精神状態に置かれた時、ふと…1人の 『偉大な先輩』 を思い出してしまいました。

目立つ事の無かったその先輩、無口で仕事はスローモー。
上役からは蔑まれ、女子社員にも相手にされず、若い連中にまでなめられるという、実に頼りないイメージの中年紳士でございました。

仕事は丁寧なのですが遅かった…
要領が悪いということもあるのですが、常人ならば半日で仕上げてしまう書類でも、先輩は夜の10時を過ぎなければ終わらない。

当初は私も周りと同じく(失礼ながら)先輩の仕事振りを尊敬できない時期もありましたが、よく見ておりますと決して不真面目なわけではなく、本人といたしますれば一生懸命に頑張っているのです。

また、如何に時間を費やそうとも書類の提出期限に遅れたことはなく、どのような内容の物でも約束された期日には必ず間に合わせてくださいますし、社外に出れば顧客の信頼度も満足度もたいへん高く、なかなかの好成績を残すことができるという 『隠れた逸材』 なのでございます。

先輩は出世欲など微塵にもない、典型的なコツコツタイプの亀人間…
実は大変な努力家であり、心から尊敬できる逸材であったと認識した時には、もう先輩は雲の上の存在になっておりました。

実に長い年月を要しましたが、地道に積み重ねていった先輩の努力が実を結び、定年間際だったとは申せ、某支社の支社長に任命されるという光栄に恵まれました。

P社の支社長と申しますれば 『一国一条の主』 でございます。
皆が馬鹿にしていた 『雨垂れ程度の微力』 が、大きくて硬い石の巨塔を打ち砕いた瞬間でございました。

私の理念は 『大きな城を射ち落とすには、巨大な大砲をもって一気に破壊しなければならない』 というものであり、それがために自分の能力(限界)を遥かに超えた仕掛けを慣行し、結果的に味わうことになってしまう 『苦しみ』 の度合いは尋常なレベルではないのです。

まかり間違えば足元を掬われてしまうという危機感が常に頭の中に渦巻いており、食事をしながらも 『仕事仕事…』、休憩していても 『仕事仕事…』、通勤電車の中でも 『仕事仕事…』、湯船の中でも 『仕事仕事…』。

そして…
一番貴重な睡眠中でも、夢の中まで 『仕事仕事…』。
朝目覚めるのと同時に、夢残業の疲れが一気に襲ってくるのです。

私は織田信長になりたかった…。
桶狭間の合戦のように、高いところでふんぞり返っている能無し幹部の本陣へ切り込み、一気に主軸の首を討ちとらなければ気がすまないという、今にして思いますれば 『とんだ謀反者』 でございましたが、先輩はなにも言うこともなく、着実に自分の仕事をこなすだけ…。

ポツリ… ポツリ…と1滴ずつ落ちる雨粒のように。

定年退職をなされます時、私もその送別会に出席させていただきましたが、その宴席場にて発しました先輩の第一声を、私は一生忘れることができないでしょう。

『ああっ…、これでやっと楽になれるんだ…』

                           by 桜川


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