あぁ 上野駅


【雑草ポエム 第322話】
私は昭和39年生まれ…
戦後の日本が最も熱く動き始めた激動の年でございますが、『あぁ 上野駅』という名曲も、この昭和39年に誕生いたしました。
私の親世代がしんみりと口ずさんでおりました名曲ではございますが、私もこの年になりまして歌詞をそのまま朗読してみますと、やはり胸が熱くなる思いがいたします。
どこかに故郷の香りをのせて 入る列車の懐かしさ…
くじけちゃならない人生が あの日 ここから始まった…
就職列車に揺られて着いた 遠いあの夜を思い出す…
配達帰りの自転車を 停めて聴いてる 国なまり…
ホームの時計を見つめていたら 母の笑顔になってきた…
お店の仕事は辛いけど 胸にゃ でっかい夢がある…
終戦後の貧しい日本国を復興させるため、斡旋された数多くの若者が集団で列車に乗り込み、上野駅の20番ホームになだれ込んだ際、不安に駆られた少年期の思い出を歌詞にしたものでございます。
右も左も判らない地方出身の未成年者が、親元を離れて大都会に押し流される…、誰でも不安な気持ちになるのは当然でございます。
名作『おしん』ではないですが、貧しい時代の口減らし的な要素もあったのでしょうから、どんなに辛い奉公でも帰りたくても帰れない…、幾度襖の陰でシャツの袖をを噛みしめながら 声を殺して泣いたことでございましょうか。
どこかに故郷の香りを乗せて、入る列車の懐かしさ…
地方人といたしまして、この歌詞に込められた心はよく理解することができます。
上野駅は北の玄関口と呼ばれておりましたが、いずれは新幹線と同様に在来線の全てが東京駅まで乗り入れることになるそうでございます。
しかし、私は上野駅と東京駅を切り離してほしいと願っている人間の一人です。
文化レベルの低い日本国におきまして、『北の玄関口』という名のロマンチックな駅があってもいいでしょう。
上野駅は立派な日本の文化でございます。
by 桜川
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