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『壁』(ブルペン捕手)



【雑草ポエム 第365話】

プロ野球の一流投手になりきった少年が一人…
コンクリートの壁に向ってボールを投げ、跳ね返ってきたボールを見事に捌いてファースト方向へ投げる仕草をする…。

やんちゃな野球少年でありますれば、こうした遊びは誰でも一度は経験した事があるはずでございます。

スタープレーヤーの揃う華々しいプロ野球機構の中におきまして、『壁』と呼ばれる地味な職業もあるということも、我々ファンはもとより、一軍のマウンドを踏むことができた一流の投手にいたりましても、けっして忘れてしまってはいけません。

『壁』とは、ブルペンキャッチャー(捕球専門捕手)を指す言葉であり、正に野球少年が相手にしていたコンクリートの『壁』そのものを例えた専門用語でございます。

『壁』はけっして目立つことはございません。
元々はプロの選手として入団し、大きな夢をかけて頑張っていたはずの夢追人…。
しかし、引退や自由契約等のやむ無き理由から、支配下選手登録を抹消されたという現実を背負う、悲しい男達ばかりでございます。

現役投手の投げ込む球を、ただひたすら捕球するのみという地味なもの。
手足を縮こませ、まるで突き出したミットの陰に隠れるように、身体を小さく丸めて構えます。

実に格好の悪いスタイルですが、そうすることによりまして、投手からはミットがやたらと大きく見えるため、コントロールが定まりやすいということでございます。

暴投球が飛んで来ようとも、ワンバウンドになろうとも、『壁』のごとくミットを合わせて受けるのみ。

鉄筋入りのコンクリート壁でさえ、長年硬球を受け続けていれば砕けて倒れてしまいますが、ブルペン捕手とて生身の人間、たまろうはずがございません。

こうした『元選手』など、故障をすれば球団としては使い捨て…。
現役を引退した後も、野球を諦めきれずにしがみ付いてきた憧れの職場から、無常に切り捨てられるという十字架を背負いつつ、今日もブルペンの中ではミットにボールが激突する衝撃音が響き渡っていることでしょう。

それでも『壁』は口を揃えてこう言います。
『俺たち壁の楽しみは、相手をした投手が華々しく活躍してくれることだ!』

成功者が一躍スターダムを駆け上り、頂点を極めることができたその時に、はたして『壁』を思い起こしてくれる人間はいるのでございましょうか。

これはプロ野球界だけではなく、どのような世界でも共通して言える事でございます。
自分が成長して参りました過程には、必ず『壁』になってくれた恩人が沢山いたはずでございます。

しかしながら…
自身にスポットライトがパッと当たったその瞬間、愚かな人間は全てを忘れ、満面の笑顔で人を見下してしまいます。
全てが自分一人の力でココまで来れたと…。
実に醜い顔をひけらかしながら…。

野良犬とて、人間から受けた恩義は一生死ぬまで忘れることはございません。

あなたは…
どうして人の恩を忘れるの…
愚かなりは、人間様よ…。

by 桜川

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