横綱輪島の土俵入り


【雑草ポエム 第373話】
昭和の大相撲界におきまして、『相撲の天才』と呼ばれた異色の横綱がおりました。
それは、第54代横綱 輪島大士 その人でございます。
先日、私の尊敬いたします相撲絵師の先生が、『横綱輪島と琴櫻の錦絵を手掛ける』という情報を得てからというもの、それこそ子供のように一日千秋の思いで完成する日を心待ちにしておりました。

そして本日、ようやく私の手元に届きました折、その見事な出来栄えに思わず唸ってしまったということは、今更ここで申し上げるまでもございません。
横綱輪島の土俵入りには、彼にしか表現できない独特の『美』がございました。
過去の様々な横綱の土俵入りを見てまいりましたが、輪島の土俵入りほど観客を魅了させる『せり上がり』はございません。
柏手を打つタイミング…
四股を踏む力強さ…
右腕を伸ばす所作…
左脇を固める角度…
じりりっと せり上がる足運びの絶妙の間…
彫りの深い鬼の形相・真っ赤な顔…
誰しもが見ていて思わず『いよっ、日本一ぃ~!』と叫んでしまいたくなる表現は、絶対に誰にも真似のできない、素晴らしい大相撲観戦の『見せ場』そのものでございました。
横綱輪島の土俵入りを称える意味で、親交の深かった森繁久彌さんが詩を認めたものがございますが、この錦絵『輪島型』を眺めておりますと、自然とその詩が懐かしく浮かんでまいります。
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さがり煌めく 土俵の鬼よ…
薫る両国 あぁ晴れの 五月場所…
どよもす声に 雲竜光る…
四股で鍛えた この五体…
どんと輪島(おいら)の 土俵入り…
『横綱輪島の道(森繁久彌)』より
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『相撲の天才』
『蔵前の星』
『黄金の左腕』
数々の異名を持つ輪島さんも、現在では協会外の人。
願わくば、花籠一門(現在は消滅)の出世頭、貴乃花光司に『輪島型』を伝授してほしかった。
by 桜川
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