続・桜川先生!

【雑草ポエム 第381話】
去る21日、私は目出度く(?)公立工業高校の教壇に立つことができました。
1時限目のチャイムの音が心地よく鳴り響き、40名の生徒が犇めく教室に入ろうとした際、一度引き戸に右手を掛けておきながら、思わずその手を引き込めて、大きく大きく深呼吸…。
『ふぅ~…』
初めて味わう僅かながらの緊張感を楽しむかのように、『いち にっ さん!』と元気よく、引き戸をスライドさせました。
一瞬にして静寂化する教室内…
入口から教壇中央のデスクまで、わずか5~6歩程度の短い距離ではございましたが、神聖な教室に1歩足を踏み入れたその瞬間、『炎のファイター・INOKI BOM-BA-YE』のテーマ曲が、私の頭の中をグ~ルグル♪
♪イノキ ボンバイエ~ イノキ ボンバイエ~♪
『おはようございまーす!』という、気合いを込めた第一声!
これで無難にスタートすることができました。
そして本日は所変わりまして、K高等技術専門校へいざ出陣!
『元気ですかぁー!』とはさすがに言えませんでしたが、高校生にはない落ち着いた雰囲気の中、この日も難なく事なきを得ることができました。
アシスタント業もまだ始まったばかりではございますが、受け持ちました2校の生徒とも、その反応はまちまちで面白く、実に有意義な時間を若い世代と楽しく過ごすことができました。
『どこでもドア製品実現化大作戦…』
やはり予想された通り、この話題が電気理論の中におきまして最も盛り上がった講義でございました。
『光に反発するもの』と、私流の出題をホワイトボードに書き記しました。
『なんだろう???』と、懸命になって考える生徒たち。
『カガミ?』『ガラス?』『金・銀・銅?』等々…
硬くなった石頭をフル回転させ、ようやく出てきた答えは物理的な回答ばかりなり。
これはやむなきことなれど、現実的な大人の考えとは、いつの時代もそうしたものでございます。
私は皆に言いました。
『この問題、ごく普通の小学生(低学年)が、いとも簡単に正解したんだよ!』
皆は目を丸くしておりましたが、これは本当の話なのでございます。
今から約7年前、某小学校の生徒を相手に同じお話をさせていただく機会に恵まれました時のこと…。
『どこでもドア』を真面目に話す私に対し、大方の教職員さんは『そんなバカな…』と苦笑い。
しかし、子供たちはいたって真剣。
食い入るように私の話しを聞いてくれているのです。
『皆でどこでもドアを作ろうよ! 光に反発するものって何かな???』
すると1人の児童が手を挙げて…
『ぼく!』と、人差指で自分のお鼻を指しました。
『はい、大正解です!!!』
私は思わず机を叩き、答えてくれた児童を思わず絶賛したのです。
呆気にとられる教職員さん。
あの間の抜けたバカ面は、今でも忘れることができません。
要するに、これが子供の純な発想であり、この混じり気のない純な発想こそが不可能を可能にする摩訶不思議なヒントであり、強烈な力なのでございます。
『ぼく!』とは、もちろん自分自身のことであり、それは全ての人間(生き物)を意味しております。
強い光線を向けられれば、必然的に目蓋を閉じて貌を背けようといたします。
要はその原理・イコール、光に対する強い反発…ということでございます。
医学的にも物理的にもその原理は理論化され、すでに研究班によって解明できておりますので、あとはそれを応用し、機械化するだけのこと…。
残念ながらこれ以上は企業秘密の領域に入りますし、色々な意味でここに詳しく記すことはできませんが、とにもかくにも私が出題いたしました内容の答えは『ぼく!』で大正解なのでございます。
人間は今まで、不可能とされてきたものを数多く可能にしてまいりましたが、それも全てが子供の単純な発想であったという事実に気が付いている人は何人いることでしょう。
物質豊富な時代に生まれた現代の日本の子供たち。
学研の『科学』と『学習』が廃刊となり、理科離れ、数学離れが問題視されて久しいですが、その理由といたしまして『どうしてだろう? なんでだろう?』と考える必要がなくなった…ということが大きな原因であると思っております。
完璧な形で完成された物ばかりを買い与えられ、バーチャルゲームは現実をはるかに超えたウルトラリアルな物ばかり。
外で自由に遊べなくなりましたので、泥や砂で山や建物を、そして枯れ木でピストルを作るようなこともなくなりましたし、虫けらなどの生き物たちとの触れ合いもまったくなくなってしまいました。
考える必要がないから、考えなければならない意味がない。
そんな子供たちが大人になり、漠然と電気理論を意味もなく学ぶということが、どうしても私には許せませんでした。
今回のくだらない質問は、そんな無反応な連中に一石投じたということであり、それがために静かな水面が少しでも波打ってくれたことを私は嬉しく思いました。
『なんだろう? どうしてだろう?』
ある種のシュプレヒコールにも似た教室内での新鮮などよめきに、自分の胸が熱くなるのを感じることができたのです。
私は心から嬉しかった…
by 桜川
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