スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

たんぽぽのうた

 庭に咲いた小さなたんぽぽの花。

 時が経ち、元気な黄色い子供たちも大きくなり、やがて白くて大きな綿帽子に成長いたしました。

 そう 今日は成長した種の子たちの巣立ちのときなのです。

 『おかあさん ありがとう』

 『おかあさん さようなら』

 一人… また一人と、種の子たちは元気よく母親から巣立って行きました。

 『気をつけて行きなさいよ… さようなら…』

 見送るお母さんの目に涙はなく、むしろ大きく成長した我子たちを、実に誇らしげに見送っているのです。

 全ての種の子たちが離れていった…と 思いきや!

 『いやだよ… いやだ。 ぼくぜったいにお母さんから離れないからね!』

 たった一人だけ、種の子がダダをこねて離れようとしてくれません。

 『どうしたの? みんな巣立っていったのよ』

 おかあさんがいくら説得しても 説明しても

 『いやだ…、知らないせかいになんか行きたくないもん…、行くもんか!』

 種の子は泣きじゃくり、お母さんにしがみついて離れようとしません。

 『こまった子ねぇ…』

 すると、おかあさんはその子の頭をなでながら…

 『うんうん、わかったからもう泣かないで。 行かなくていいから、おかあさんのそばに ずうっといなさい』

 『ほんと?… ほんとにずうっといていいの?』

 おかあさんは やさしくうなずいてあげました。

 『おかあさん、ありがとう…』



 やがて夜になり 大きなお月様がたんぽぽの親子を優しく照らしてくれました。

 『今夜はきれいなお月様ねぇ… おかあさんもねぇ、親から巣立ったときの前の夜は こんな大きなお月様がでていたわ』

 種の子は黙ってお月様を見上げました。

 『次の日にね… みんなと一緒に風に乗ってね、晴れた青い空に向かって舞い上がったの。 それは…おかあさんとお別れするのはとても悲しかったけど、でもね、あの広いお空の向こうには きっと素敵な夢があるって思うとね、もうワクワクドキドキしたものよ』

 種の子は まだ黙ってお月様を見ています。

 『色々なところに流されていって 色々な怖い思いもしてきたのよ』

 種の子は ピクッと反応し、マジマジとおかあさんの顔を覗き込みました。

 『虫やカエルに食べられそうになったり、排水溝に落ちて流されそうになったりしたこともあったわ』

 種の子は ヒシっとおかあさんにしがみつきました。

 『でもね…、そのたびに 風さんがやさしく吹いてくれて、わたしを助けてくれたのよ。 風さんはいつも私をまもってくれたわ。 そしてね、日当たりがよくって 一番安全なこのお庭に運んできてくれたの』

 おかあさんは そういい終わると すこしからだ全体を傾けはじめました。

 『おかあさん、どうしたの… ねむいの?』

 『ううん、そうじゃないの… そうじゃないのよ…』

 たんぽぽは、役目を終えると茎だけとなり、やがては枯れて土に抱かれ、そのまま永眠するものでございます。

 『おかあさん、ごめんね… ぼくがいるから、あたまが重いんだね… ごめんね』

 『だいじょうぶよ…安心なさい。 ここの庭はすばらしいのよ。 私はここのきれいな空気と新鮮な水をたくさんもらってね、そして太陽さんにいっぱい生きる力をもらって大きくなったのよ』

 種の子は また黙ってお月様を見上げました。

 『私をそだててくれたお母さん ありがとう。 風さん ありがとう。 お庭さんありがとう。 お水さん ありがとう。 そして太陽さん 本当にありがとう』

 お母さんは そう言いながら種の子の頭をなでました。

 『お母さんはね、今まで 本当に幸せだったわ…』

 種の子は… ただ黙ってお月様を見ておりました。



 やがて…

 東の空が白々と明るみをおびてまいりまして、 太陽の先端が顔をのぞかせはじめると同時に、 フワッと やわらかな朝の風が吹いてまいりました。

 種の子は お母さんの目を見ながら微笑みました。

 お母さんも 種の子を見ながら優しく微笑んでいます。

 そして… 

 まるでやさしく結んでいた手と手をゆっくりと離すかのように…

 種の子は すぅ~っとお母さんから離れました。

 さよならの言葉も、手を振るしぐさも無く、ただお互いに見つめあって、微笑みあいながら 離れて行きました。

 種の子が いよいよ見えなくなった時、 おかあさんの目から 一滴の涙が零れ落ちました。



 茎となり、やがて枯れた たんぽぽのお母さんは、そのまま土に抱かれて幸せそうに 永久の眠りにつきました。

 お母さん ありがとう 

 朝風さん ありがとう 

 お庭さん ありがとう

 お水さん ありがとう

 太陽さん 本当に… 本当にありがとう。

1c2f273bb5fe6944f99b504b122ae40d_copy.jpg
スポンサーサイト
プロフィール

桜川 久慶

Author:桜川 久慶
雑草ポエム、書籍化することができました。

カレンダー
02 | 2005/03 | 04
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
最新記事
最新コメント
リンク
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

カテゴリ
月別アーカイブ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

検索フォーム
QRコード
QR
フリーエリア
オセロゲーム

フィリピン留学
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。