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忍ぶ 不忍(しのばず) 無縁坂

【雑草ポエム 第641話】

無縁坂(むえんざか)
1975年、さだまさしさんが『グレープ』時代、その最後にリリースした名曲として知られており、東京都台東区池之端1丁目から文京区湯島4丁目へ登る、現在も実在する目立たない坂道でございます。

この歌が誕生した当時、まだ12歳の幼き私には、この歌の真の意味など知る由もございませんでしたが、TVドラマの主題歌となっておりましたので、物悲しそうな歌として長く記憶に残っておりました。

私は最近、とある理由からこの歌の奥深さを知るに至りまして、昨日、ふらっと『無縁坂』へ足を運んで参りました。

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無縁坂とは、『無縁仏』をイメージさせるものでありまして、事実、坂の上には行き倒れの無名の死者を葬る『無縁寺(現・講安寺)』があったことが、この呼び名の由来であると知りました。

また、現在でも坂の左側の司法研修所(旧・岩崎弥太郎邸)は高い木々に覆われており、日中でも薄暗く、カラスの鳴き声も聞こえたりして、いかにも『無縁坂』という気配が漂っているような気もいたします。

無縁坂の坂道とは…
その坂道が、人生のたとえになっております。

後ろを見る、というのは、過去を振り返る、という事でございます故、後ろを振り向くなという(主人公の)『母』の言葉は、過去を振り返っても仕方ない…と、我が子に言い聞かせているところでございます。

無縁坂のこの歌詞は、さだまさしさんが幼い頃に書いた小説の冒頭を歌にされたものだそうで、その小説では『坂の上に父親の家があった』という続きがあったそうでございます。

坂道を…、小さな子供の手を引いて…、ため息をつきながら子供の父親の家に向かう女性。

どうも普通の夫婦ではないようでございます。

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私は無性に知りたくなった…
『忍ぶ 不忍(しのばず) 無縁坂』という本当の意味を。

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主人公の言う『僕の母』とは、独り淋しく死んでいった、無名の行き倒れの女性の一人に数えられていたようで…(憶測です)。

坂の下には不忍の池があり、その名はもう耐えられそうにない身投げの名所のような霧を放っているのは何故でございましょうか。

耐えられるか,いやもう耐えられそうにないか…という、2つに引き裂かれながら、危うく存続している母の人生。

『忍ぶ 不忍(しのばず) 無縁坂』
そういう危ういところで保たれた『かみしめるような ささやかな僕の母の人生』を感じ取り、少年の心で綴った詩であると私は思いました。

『母はすべてを 暦にきざんで 流してきたんだろう 悲しさや苦しさは きっとあったはずなのに』

悲しさや苦しさは明白にありましたが、それを不平不満のじゃじゃ漏れにせず、母は『ため息』の中に昇華し続けたのでございます。

『運がいいとか 悪いとか 人はときどき 口にするけど めぐる暦は 季節の中で ただよいながら 過ぎてゆく』

この少年の母は、不運だったにちがいない…ですが、それも一局の人生であり、月日はいつでも淡々と流れ、辛さ、淋しさは、時として乱暴に肌を刺したりいたしますが、それでも生き続ける…、生き続けなければならないと思うのが、その当時の母親でございました。

自分の愛する者(我が子)への、優しさだけを生きる価値として…

『うっせーよ、このガキ!』と子供を怒鳴り、容赦なくひっぱたくヤンママとは対極の、これは一時代前にはどこにもいた、何より子供にだけ優しさと正しさを注いでくれる『忍ぶ不忍無縁坂』型の母親でございます。

ふっ…と、そういう母親の姿を『かみしめ』たくなる『ささやかな 僕の母の人生』というものが、あの一時代前には沢山あったはずなのに…。

夫(つまり子供の父親)への不平不満をぶちぶちと子供に言い、自らの生活を省みることもなく、人生観を模索することもなく、大切な我が子を自らの不平不満の捌け口にしようとする、そんな昨今の母親(もどき)には…見習ってもらいたいことも多々ございます。

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この無縁坂を歩きながら、我が母の我慢に我慢を重ねた『ささやかな人生』を思い、この歌と重ね合わせますれば…

晩秋の空は高く、心の色は青かった。

by 桜川
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No title

じっくり歌詞を理解した事はなかったけど そんな切ない歌だったんですね

ちなみに私の名前(本名)が入ってますv-411

No title

ぐっときますね〜。

 親になるには資格も試験もありません。生活が豊かになった日本。心は豊かになれなかった。便利で豊かな暮らしを求め、働き続けた日本。
 
 昭和の駄菓子やがあり子供が駆け回って遊べる環境がなくなった今
 
 なるべくして、なったのかなぁと
  しみじみ昔を思い返しました。

No title

奥深〜い話をありがとうございました! なんか淋しさを感じる場所ですね

唯一!気になったのが・・
「文無し」です。

行き倒れた人は、皆さんお金もなかったのでしょうね(笑) 

えっ?読み違いだって?

久々に

 ダイレクトコメント!

 幸せな私には無縁の坂なのね~、なんちゃって。

No title

子は親の背を見て育つ。

そう言いますね。


ひろしも老いた親の背中を見て、
いろいろ胸に去来するものがあります。


ひろしの行く坂の向こうには、何があるのでしょう。。。

No title

空蝉「うつせみ」YouTubeで検索してみて。さださんがうたってるよ。

無縁坂より身近で身につまされます。

No title

深い話をありがとうございます。
私もさださんの曲は聴いてましたが、意味は理解していませんでした。
改めて聴き直します。

No title

今は、すてきな坂ですねv-411
遠近感のある写真がいい~v-218

No title

先日
根津の辺りから東大の赤門前を通って
湯島から後楽園の方まで散策しました

無縁坂も通った気がします


人は人との縁の中で生きている

でも
敢えてそこを断ち切る生き方も潔いのかもしれませんね

No title

いわゆる御茶ノ水界隈…20年近く足を運んでいません
変わったものもあるでしょうし
変わらないものもあるでしょうねv-353

水道橋辺りから御茶ノ水や神田の古書街…
ゆっくり散策してみたいものです

「無縁坂」は昔よくギターを弾きながら歌いました
v-363

No title

自分が生きてる価値って何だろうって思わず考えてしまいました。

そんな事を考え、悩んでいても時って淡々と無情に過ぎていくんですよね。

No title

無縁とは孤独な印象を受けますねぇ。

いかに自分はノー天気であるか、改めて考えさせられます。

正直言いますと、さだまさし氏の曲はあまり知らないので
実際の曲を聴く必要がありそうですね。

ちなみに、今は職場のPCから書いているので
スピーカーがなくて聞けませぬ。

No title

最近、同じさだまさし氏の『夢の吹く頃』にハマっていましたが、久し振りに他の歌を聴きました。
『無縁坂』も昔から聴いた事はあり、懐かしい歌だったです。

それにしても、親子共々“不遇”と言われる人生を知らない私にとっては、さだまさしの語る親子の世界は、想像するしかありません。

戦争体験しかり、震災体験しかり、私はあまりにも色々な事を、『体験していない』ですから。
母親相手に生意気ばっかり言っていた、少年~青春期の人生でした。

命懸けで“母親”を務めようとするその覚悟と気力は、一体どこから来るのでしょうね?
単に『その人が出来が良かった』では片付けられない問題でしょう。
とにかく、さだまさしの歌は大好きですね。

No title

寂しさを感じさせる歌です。
カラオケで歌うのは人気でしょうか。。。
どんなでも子供の母はわが子を守るもの。ですが。。
現代は希薄な母の愛かな。。。

出来るなら、、、
もう少し明るい感じの母を歌いたい私です

No title

かるみあさん
シノブちゃん?
ミドリちゃん?
まさか…ムエン(無縁)ちゃんじゃないよね(笑)

No title

きなこ♪♪さん
素敵なコメントをありがとうございます。
確かに、親になるのに試験は無いですし、子供も親を選べないですからね。
先人のお陰で生活は豊かになり、アメリカの笠下にいるお陰で平和ボケしすぎてしまったようですね。
なんか、色々と考えてしまって…。

No title

えびっちさん
こちらこそ、嬉しいコメントをありがとうございます。
私の親世代は『金』というものに貪欲でして、そりそこ着の身着のままの状態で汗水たらして働いておりました。
報われたのはその子世代以降ですから…物悲しいですね。

No title

なこさん
ダイレクトにコメントを入れてもらえたのは嬉しいですが、あちらの方はご無沙汰しっ放しでしょ?(汗)

No title

ひろしさん
貴方のようなでっかい背中の持ち主でも、親の背中の大きさには敵いませんわね。
ギャートルズの世界は坂道だらけですから、坂の上にはマンモスが…♪

No title

さくちゃん
あとで調べいて見てみますね。
情報、ありがとう♪

No title

ぐっどさん
コメントをありがとうございます。
子供の頃には理解できない歌でも、この年齢になってようやく染み入る事が多くありますね。
まだまだ勉強不足の私です。

No title

キーコさん
いやいや、キーコさんの撮られる写真には敵いませんよ(笑)
今度、キーコさんも写真を撮りに出向いてください♪

No title

亜子☆さん
無縁坂は目立ちませんので、看板を見掛けないと解らないですね。
東京大学の鉄門を覚えればよく解ります。
人の縁は不思議なものですが、潔く断ち切ることのなんと難しい事でしょうか。
その点は、やはり女性の方が潔いですね。

No title

洋さん
あの辺りは基本的に裏通りなどは昔のままの場所が多いです。
変わるのはメインストリートばかりですので、古本屋もしぶとく健在です(笑)
洋さんはギターを弾けるのですね、素敵です♪
いつか生ライブを!

No title

yoziさん
お互いに色々と考えたくなるお年頃。。。
悩んでいるだけ損ですよね。
そんなヒマがあったら、出来る事も沢山ありますから!

No title

カ~ルおじさん
仰います通り、無縁とは孤独な人生そのものでございます。
御寺にも『無縁仏』がかならずありますし、事の成り行きしだkでは、明日は我が身であるとおもってみたり(汗)
無縁坂の名前の由来を知った時には驚きました。

No title

トコトコさん
無縁坂はもう古い歌になってしまいましたが、今頃になって奥深さを知るとは情けない思いもいたします。
TVドラマの主題歌でしたので、なんとなく心に残っている程度でしたが、現実に『無限坂』を歩いてみますと、なんだか無性に悲しくなってしまいました。
トコトコさんにも解ってもらえて嬉しいです。

No title

野菜の花さん
カラオケではあまり歌いたくないかもしれません。
車を運転中とか、独りぼっちになった時に思わず口づさんでしまう歌…。
母親による児童虐待などのニュースが後を絶ちませんが、どうしてこんな時代になってしまったのでしょうか。

No title

> 桜川さん 

無縁ちゃんです(嘘)

No title

さださん好き〜無縁坂の歌も好き〜ほんとに無縁坂ってあるんだね〜

No title

かるみあさん
なんて知的なお名前でしょうかv-7

No title

いっち--さん 
無縁坂は実在します。
目立たない寂しい坂道ですが、歩いてみるのもイイですよ♪

我が人生を悔いなきものとするために悪しき因縁こそ無縁のものと致したい

心を強く志を高く。
我が子、我が心に二度と恥じぬ不動の信念を抱き生きるのみ。

東京って

何気に坂が多いですよね。
徒歩で行くと結構な運動になりますよ。

No title

無縁ってコトバだけでさみしいですよね…

どんな時代になっても、いろいろな縁(えにし)は大切にしたいですねv-398

さだまさしさんの歌、聞いたことなかったです
カラオケたっも歌うひとがいなかったですよ〜

No title

あんさん
コメントありがとうございます。
なにかご自分に言い聞かせているような内容ですが、誰しもが当てはまるお言葉だと思います。
私も、かくありたく…!

No title

ふくやぎさん
コメントありがとうございます。
特に下町には色々な名の付く坂道が多く、タレントのタモリ氏もそうですが、東京坂道研究会なるグループに属しているそうです。
調べれば奥が深いかもしれませんね。

No title

ほのかさん
コメントありがとうございます。
仰います通り、無縁という言葉は本当に淋しい感じがいたします。
無縁坂という名を付けた理由は解りましたが、日の当らないひっそりとしたその坂は、本当に淋しさを象徴するようなイメージです。

No title

題名見てすぐに歌が頭の中を流れたよ ^^  懐かしいね (彼らの歌は寂しい感じのが多かったね。)

No title

Junさん 
初期の頃は、さだまさしイコール暗いというイメージが強かったですね。
良さが理解できるようになるまでけっこう時間がかかりました。

No title

桜川さん、今頃になって書き込みをしてすいません。

桜川さんの雑草ポエムにはいつも心が吸い込まれます。なるほど、そうだったのか、と教えていただくことばかりです。

このポエムもいろいろと自分自身に当てはめながら一気に読ませていただきました。

文章に桜川さんの心が込められているから、読ませていただく側も吸い込まれるのだと思います。

改めてさだまさしさんの曲を聴き直してみます。

今回もありがとうございました。

No title

おだまきさん
お返事が遅くなってすみませんでした(汗)
そして、今回も大変嬉しいご感想をありがとうございました。

恥ずかしながら、私も最近になって気が付くことばかりであり、こうして文章にすることによりまして、自らの心に刻もうと思っている次第でございます。

No title

そうだったんだ…
この曲は 今もとても好きですが 文京区だとは全く知りませんでした…
京都だと思っていました
なるほど
不忍通りから上がるのですね。。。
時間の有るときに 桃花もこの日記の内容をかみしめながら 散策してみます!

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Author:桜川 久慶
雑草ポエム、書籍化することができました。

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